ウロウロ歩き回って見かける度に撮っていたので場所も時間もバラバラなのだが、緑の船が引き寄せられる建築物はだいたい4種類に分かれる。
簡単に言うと「なんとなく木造建築」か「なんとなく古い洋風建築」か「なんとなく和洋折衷な建築」か「無意味にぼろぼろな建物」だ。

これは【松江シティホテル】のすぐそばにあった骨董屋。

「新古美術」というのは矛盾してる気がするのだが、看板がステキ♪
あ、「新美術」と「古美術」を扱ってるってことなのだろうか?
創業は天保元年(1830年)というから す ご い !ですね。

こちらもその近所にある民芸品のお店。
ディスプレイがイイ感じ。

さらにその民芸品店の裏の路地にあった漆器のお店【山俣八雲塗本舗】の正面。
正面の屋根がいい♪
=八雲塗って?=
八雲塗」の創始者である坂田平一は、天保14年(1843年)松江西茶町で代々藩お抱えの駕籠(かご)塗職人の家に生まれた。
しかし平一がその職を継いだ後、時代は明治となり廃藩置県により松江藩も消え失職してしまった。
その後、彼は人力車の塗装や直し物はどで生計を立てていた。
ある日、古道具屋から中国製の存星塗(ぞんせいぬり)の盆を見る。
その雅味ある手法に魅せられ、平一はこれを見よう見真似で盆を作ってみた。
その試作品が見事な出来であったため、唐物(からもの:唐物風の品は国内産であっても唐物と呼ばれていた)として売り出されたという。
それが明治10年(1877年)から明治19年(1886年)ごろのこと。
その後も平一は独自の工夫を重ね、すぐれた作品を制作するようになる。
これが時の島根県知事籠手田安定(こてだやすさだ)の目にとまり、知事や友人の勧めで「八雲塗」の名をつけて販売されるようになった。
平一の塗手法は布着せ本堅地というもの。
①錆研ぎの上へ中塗せずに削り墨を引き、すぐに絵付けをする。
②それに錫粉で模様を描き、中へ朱、黄、茶、緑などを固練りで塗り、乾いたところへまた塗る。
③さらに乾燥した黒目漆を薄く塗り軽く炭研ぎをする。
④つぎに油分のない朱分漆を塗って、胴擦り仕上げをする。
透漆を塗って仕上げるため年月が経つほどに漆が透明度を増し、描かれている絵が鮮明に浮かび上がってくるというもの。
平一考案の「八雲塗」はたちまち評判となり、模倣者が続出し生産も増していった。
そして同業組合の設立や八雲塗研究所などが設置され、昭和初期に職工は50名余を数えた。
現在は、八雲塗も①商品的なものと、②創作的なものとの二流があるといわれている。
アルバム、茶器、盆、銘々皿、椀、硯箱などがつくられ、みやげものとして親しまれている。
昭和57年(1982年)3月に島根県ふるさと伝統工芸品に指定。
『島根観光辞典』(島根県観光連盟発刊)より
★【松江市の観光:芸術文化:八雲塗】参照
★【神々のふるさと山陰:八雲塗】参照

右から左へ【玉盛堂】と読む並びが時代を感じさせます。

この時は何のお店か、はたまたちゃんと営業しているものなのか分からなかったのだが、ちゃんと営業している和菓子のお店だったようです。
★【島根の菓子】参照

ん?
イイ感じな木造建築なのだが、なにかが違う…。
はて?
あ!そうか、2階の窓がサッシなんだ。
だからそこだけ何か浮いた感じで落ち着かないのだ。
いやでも、多分住んでいる人にとってはサッシの方が隙間風もないし、窓拭きもしやすいだろうし…。
でもなんか1階がイイ感じなだけにもったいない気がする…というのは大きなお世話ですね。ハイ。

でも、こういう「町屋」っていうの?最近とみに好きで、こういうお家の表情がいいなぁと思う。
京都にも多いみたいで、最近買った雑誌『なごみ4月号』(*2007年春号)の別冊『京都に住まえば…』で組んであった特集を思い出した。
京都と松江じゃ都市としての大きさは違うだろうけど、なにかこういった建築物の今後について参考になるんじゃないかなと思った。
「京都には空間が余っています。
情報が表に出ないだけで、住み手のなくなった古い物件がたくさんある。
借りたい人は多いのに、それがうまく繋がっていないんですね」
「歴史的価値のある住宅。
住居可能な倉庫。
古くて味のある店舗。
そんな物件を発掘して再生し、売買や賃貸の条件を整える。」
★【淡交社:京都の茶道美術図書出版社HP】
そう言えば、先日WBSのニュースでもこの「歴史的建造物(住宅)を見直そう!」という特集をやっていた。
日本の近代史を今に伝える歴史的な建造物。
資産価値はゼロだが、新たな価値を見いだし有効活用する動きを追った。
★【ワールドビジネスサテライト(WBS)】→「歴史的建物にビジネスチャンス」2007年4月11日放送
特集では都心にあった古いぼっろぼろの洋館をワタベウェディングが改装し、結婚式場として甦らせたというもの。
<追記:参考>
★【東京都公園資料館(旧日比谷公園事務所)(東建月報1月号掲載)】
★【【東京都指定有形文化財】 旧日比谷公園事務所(フェリーチェガーデン日比谷) アクセス・見学のしかた】近代文化遺産見学案内所より(*す、素敵!)
ワタベウェディングは以前にもこのWBSで「人口減少時代はこだわり婚」(2005年8月26日放送)という特集で取り上げられていた。
なかなかの積極的な経営戦略が目にとまる企業のようだ。
改装費用は1億何千万円とかかったらしいが、それでも都心のビジネスで使える土地に一から目的の建物を建設するとなると、2~5億円はかかるという相場からすればかなり安いお買い物だといえるのだとか。
しかも、案外こういった古い建物の価値を、当の所有者や住居者が知らなかったりすることはあるようで、こういった古い建物は放置され朽ちていくことが多いらしい。なななんてもったいない〜っ!(>_<)
企業の経済活動に翻弄されないだろうか…という不安もあるが、わずかでもこういった昔ながらの粋を感じさせる建物が見直されてきたのはいい傾向だと思う。
この特集でほっとしたのは、土地建物をただ安く仕入れるには…というだけではなく、「歴史的な古い建物をどう保存し、いかに活かしていくのか」という視点で語られていたこと。
もし緑の船に自由に使える資金がいくらでもあるのなら、日本中のこういったひっそりと朽ちていくのを待っているような古い建造物たちを改修・保存していきたいくらいなのだ。
そしてただ保存するだけでなく、なんとかその土地の人々の手で活用できるようなシステムができないものだろうか…。
3月に松江を訪れた時に、緑の船がよくウロウロしていた近所にけっこう大きなマンションの建設現場があった。
ちらっと概要を覗いたりしてみる。
多分、マンションそのものは住む人にとっては便利だろうし人気もあるのだろうと思う。
…思うのだが、マンションという建築物で緑の船が「おお!」と感動するような外観のものには出会ったことがない。
ので、ちょっとしょぼんとしてしまう。
ここにどかん、とぴかぴかの高い建物が建って、で、だから?みたいな…。

でもそんなこと言ったらこの建物はどうよ!?…ってことなのだが、ナゼか「これはこれでイイ感じじゃない♪」だと思ってしまうので、建築物への趣味が偏っているだけだと思ってスルーしてやってください。

ところで、木造住宅の表情を決めるのはこの「窓」なんじゃないかと最近緑の船は思うのだがどうでしょう?
サッシが悪いとは思わないけど、最近はあまり加工したすりガラスとか見ないなぁ。
採光重視のピカピカな大きな窓が主流なのだろう。
あと、温度調節重視のペアガラスとか、防犯対策や地震・火事対策のワイヤー入りガラスとか?(もちろんそれが悪いとは言わないけど…)
細かく仕切られた窓枠はコストがかかるのか、隙間風が吹き込むからなのか…あまり好まれないのかもしれない。

でも、こんな窓があることで家の表情がぐっと「美人」に見えるので、こういった窓はなくならないでほしいと密かに願ってマス。