とある夜、雅楽の音に気がつき提灯明かりに吸い寄せられた。


その頃にはもうすっかり花も散っており、若々しい葉桜の下で夜神楽が舞われておりました。

若々しいのは葉桜だけでなく演奏の方もそのように思われました。
というのは
「それはそーゆー演奏なのか!?」
と思わず突っ込みたくなるほど時々あまりにもスットン興な音を笛(横笛だったか笙だったかは不明)が放っておったからでありました。
♪ピ~~ ヒャラ~~ ヒャラ~~ プヒッ ピ~~~…♪
はじめは
「雅楽ってこーゆー感じだもんねぇ」
と聞き流しておりましたが、この プヒッ♪とかピヒィッ♪とかがあまりにも音楽的な流れ(及び舞台の空気)から突き抜けていて
「…こ、これは、ただ単に 下手 なだけでは…?」
と聴きながらだんだん膨らむ笑いを禁じえなかった私でございます。
しかしながら演奏方も舞方も真剣にて一所懸命であり、たとい稚拙な手だったとして、こうも愉快な気分になりますれば神様もほほえましくお見守り下さりましたことでしょう。

花の下にて舞われておれば、もっと愉快な心地になったかもしれませぬな。
しかしこの初々しい若葉のはじめの頃と言うのはいつも、あの浮かれた花の季節がまるで幻だったかのようなふわふわした気分を起こさせます。
元旦に新年を迎えたと思い、節分に一足早い春を感じ、桜の開花で新年度を改め、新緑で4度目の「始め」モードに入る。

五月病なんて言ってられませんわなぁ。