仕事の邪魔をしないよう、今も昔を偲ぶ庭を迂回して屋敷の北側へ飛び石を踏みながら移動する。

北側とはいえ、開け放たれた部屋は清々しい明るさがある。
改修されながら、今から274年ほど昔(*)の家を皆が大事に使ってきたのが分かる。
(*18世紀始めの江戸時代初期)
このあたりの屋敷は1733年(享保18年)の大火で焼失し後に再建されたものだが、この頃は長崎で狂犬病が流行ったり、江戸では米価が高騰して打ち壊しが多発したりした年でもある。
ここは禄高600石程度の中級藩士たちが入れ替わり移り住んできた。
この家はその生活を静かに見守り続けてきたのだろう。